船橋の、南関の、地方競馬の、日本の競馬界で一時代を築いた63歳の石崎隆之騎手が、2019年3月31日付けで約45年の騎手人生に幕を下ろします。
石崎騎手は1973年7月に船橋競馬場からデビュー。地方通算6269勝を挙げ、中央勝利は74勝。重賞勝利は189勝。
1987年から2001年にかけて、15年連続で南関リーディングを獲得。
アブクマポーロで東京大賞典や帝王賞、中央の東海ウインターステークスを制し、トーシンブリザードとは南関東史上初の無敗で4冠を制覇するなど、数多くの名馬たちと歴史を作り上げてきました。
さらには、ワールドスーパージョッキーズシリーズ(現在のワールドオールスタージョッキーズ)にも参戦し、1994年には地方競馬騎手としての初優勝。
ここでは書ききれないほどの成績を残してきた石崎騎手。(石崎騎手の騎手服は永久保存されることも発表されました)
3月15日には船橋競馬場で引退式が行われました。開催を通して石崎隆之騎手引退セレモニーと題し、場内は石崎騎手の勝負服カラーで彩られていました。
今年の干支イノシシもコスプレ(*^_^*)
キャロッタもコスプレ(*^_^*)
引退式当日……。
この日の船橋競馬場は全レースが石崎騎手にちなんだタイトル。→こちら。
4レースの『南関東の哲学者賞』というアブクマポーロを例えたレースでは、石崎騎手の弟弟子でもあった田中力騎手が4番人気レオダイナミック(船橋・岡林厩舎)で勝利。
田中騎手のご両親もちょうど来場していた日で記念に口取り。田中騎手が石崎騎手から息子のようにお世話になっていたということで、ご挨拶も兼ねていらっしゃったそうです。
「自厩舎(岡林厩舎)の馬で勝つことができたのはよかったですし、父のように慕わせて頂いていた石崎さんの冠レースを勝つことができて本当にうれしかったです」(田中騎手)。
そして、引退式が実施される直前の7レースでは、愛息・石崎駿騎手が手綱を取った4番人気クラトリガー(船橋・石崎騎手)が優勝。スタートで遅れて後方から進めていきましたが、最後の直線で豪快に差し切りました。
ウイナーズサークルには引退式のためにたくさんのお客様が集まっていて、ゴール前には「駿〜〜〜〜〜!」と大歓声が巻き起こっていました。
「馬自体は休み明け3戦目で結構よくなっていたのですが、スタートでトモを落としてしまって出遅れて、腹をくくって後ろからいきました。頭数は少なかったのでいいところをさばくことができて、うまくいきましたね。3コーナーくらいからエンジンがかかり始めた手応えで、もしかしたら勝てるかなと思いました。
父親だと、ゴール板でピタリと交わす感じですかね(笑)。最後の直線では歓声も聞こえてきました。今日はどこかでひとつ勝ちたいと思っていたので、勝つことができてよかったです」(駿騎手)。
この日は、石崎メンコを着用した馬たちも参戦し、盛り上げていました。
エリースコール(川崎・山崎尋厩舎)↓
ピュアアモーレ(浦和・小澤厩舎)↓
他にも石崎騎手にちなんだ装いで登場した馬たちがいましたよ。わたしは取材などもあって全ては撮影できなかったので、ファンの方撮影のお写真。→こちら。
誘導馬さんたちも↓
石崎騎手はスーツ姿での登場。
配布されたフラッグ↓
引退式には多くのファンが集まり、石崎騎手のご家族や船橋ジョッキーズ、その日に騎乗があった3場のジョッキーズ。石崎騎手と仲がよかったという中央競馬の横山典弘騎手や南関時代からかわいがっていた戸崎圭太騎手の姿もありました。
石崎騎手からは、派手な演出をしないようにというお人柄を表すような要望があったそうですが(例えば、胴上げは絶対にしないようにとか(^^;)、石崎騎手のこれまでの功績を、集まったみんなでひとつになって噛み締めるかのような、そんなとても温かな穏やかな素敵な時間になりました。
この日の動画はこちら。
苦楽を共にしてきたご家族の皆さんと、家族のように付き合ってきた楠ファミリーと↓
奥様の恵子さんは涙を浮かべて引退式を見守っていらっしゃいました。
「もう一度勝負服を着て息子と一緒に乗る姿を見たかったですが……。仕事一本でやって来たとても真面目な人でした。自己管理もすごい人だったので、食事は主人が好きな魚と野菜を中心にバランスよく作ったり、ナイター競馬になると仮眠を取っている時間帯には絶対に起こさないように気をつけたり。
とにかく厳しい人だったので本当に大変でしたが、レースで勝った時にはたくさんの方にお祝いをして頂けて、とても幸せな時間でした。今は、ありがとうということと、お疲れ様ということを、伝えたいです。
頑固でマイペースな人だったので、皆さんにもご迷惑をおかけしたかもしれません。本当にありがとうございました」と、集まったマスコミにお話しをしていた恵子さん。
子役としても活躍している孫娘のユノちゃんからはサプライズの表彰式で努力賞が送られました(^^) その様子は先ほどの動画でご覧になれますよ。参考までに、ユノちゃんはNHKのドラマにも出演するそうです!
まさか、石崎騎手はこれからステージじいじとして活動はしませんよね?
あ、しないそうです(^^;
引退式とマスコミ用の記者会見をまとめた石崎騎手のコメントです。
「昨年7月のレースが結果的には最後になりましたが、その時点ではまだ辞めるつもりはありませんでした。その頃に病気になって入院したことで馬にはずっと乗っていなかったので、年齢もあるし、秋くらいから騎手試験はもう受けなくてもいいんじゃないかなと辞める決断をしました。
苦労したことは今になってみれば思い出で、いろんな馬たちとたくさんのレースを勝たせて頂いて、デキすぎの最高な幸せな騎手人生でした。
アブクマポーロにしても、トーシンブリザードにしても、昔ではトムカウントにしても、自分で調教に乗って手掛けてきた分、思い出深いです。人に任せたくないし任せられない性格で、他場に乗っている時も、調教に乗ってから競馬場に出かける毎日でした。忙しい時は競馬のこと以外は考えられませんでした。
乗ってきた馬たちに感謝しています。レースでの悔いはありません」(石崎騎手)。
愛娘のチナミちゃんが撮ってくれた写真です。この時、あまりにも人が多くて近づけませんでした(^^;
石崎騎手がまだあんちゃんこの頃に、一緒の部屋で暮らしていたという石崎騎手の兄弟子でもある、佐藤賢二調教師と楠新二厩務員。兄弟子たちからの贈る言葉はこちら。
今後の石崎騎手は、季節がやって来ると騎手時代から楽しみにしていたという地元の北海道で行者ニンニク採りなどをしながら、悠々自適な生活を過ごされるそうです。競馬の世界からは離れるようですが、息子の駿騎手がいますし、変わらず近所にお住いなので、これからも船橋競馬場を見守っていくことに変わりはないでしょうね。
騎手の後輩たちには、「怪我をしないで悔いのないようにしてください」と。
南関と言えば石崎騎手。そう言っても過言ではないほどに、南関では石崎騎手時代が長く続きました。
2019年3月31日で、ひとつの時代が終わります。昭和から平成をまたぎ、その平成の終わりとともに……。
石崎隆之騎手、本当にお疲れ様でした。ありがとうございました。